【ドケルバン病】腱鞘炎の一つ、症状や原因、セルフチェック方法、治療方法

ドケルバン病とは

ドケルバン病は別名“狭窄性腱鞘炎きょうさくせいけんしょうえん”とも言われ、親指の腱の通り道がせまくなって生じる腱鞘炎の1種です。

みなさんに試していただきたいのですが、親指を広げると手首の親指側の部分に2本の線が浮かび上がると思います。それが親指に走っていく腱で、短母指伸筋たんぼししんきんと長母指外転筋ちょうぼしがいてんきんという筋肉の腱になります。ドケルバン病はその2本の腱が手の甲側にある「腱鞘けんしょう」という通り道を通る際に生じる腱鞘炎となります。

ドケルバン病はどういう病気？

親指の使いすぎにより腱の通り道である腱鞘が腫れて厚くなり、中の空間が狭くなってしまいます。さらに腱の表面が傷付いてしまい、親指を動かし続けると腱の腫れや傷がどんどん悪化し、悪循環に陥ります。

特に親指の手の甲側の腱鞘のことを「手背しゅはい第1コンパートメント」と呼ぶのですが、その中には短母指伸筋腱（指を伸ばす腱）と長母指外転筋腱（指を広げる腱）の2種類の腱を分けるための壁が存在し、この壁の影響でなおさら腱の通り道がせまくなりやすく、腱鞘炎が悪化しやすいという特徴があります

ドケルバン病の診断

以下の動作を行った際に、親指の付け根（手首の親指側）に痛みが生じる場合は、ドケルバン病の可能性があります。

• 親指を反対の手で握り、小指の方へ引っ張る
• 親指を内側に倒して他の指で覆い、そのまま手首を小指側へ倒す
• 手首をできるだけ直角に曲げ、親指を伸ばして人差し指の間を大きく広げる

ドケルバン病の治療

まずは安静にすることです。場合によっては「シーネ」という添え木を使って親指が動かないように固定します。次に貼り薬や塗り薬などの消炎鎮痛剤しょうえんちんつうざいを用いて炎症を抑えます。貼り薬や塗り薬で効果がない場合は飲み薬の消炎鎮痛剤を使用することもあります。

これまでの「安静、貼り薬・塗り薬・飲み薬」で改善しない方は、注射を検討します。注射には「キシロカイン」という局所麻酔薬と、「ケナコルト」という炎症を抑えるステロイド剤を用いることが一般的です。非常に効果が高く、注射して帰宅する頃には痛みがとれているケースがほとんどです。およそ3カ月から半年程度効果が持続します。

何度も注射を繰り返すと腱に負担がかかり、腱が切れてしまう可能性があることです。したがって、同じ指に対してこの注射は２回程度までしか行わないことが一般的です。

最後に手術です。注射で症状が改善し、半年後に再発してまた注射し、さらに半年後くらいに再再発したとしましょう。その場合、3回目の注射は腱にかかる負担が強くなるため行うことは少ないのです。
そうなった場合には手術を行います。腱鞘切開術けんしょうせっかいじゅつという手術で、局所麻酔で行うことができ、日帰り手術が可能です。簡単に言えば、腱を抑えている腱鞘を切って腱の通り道を確保してあげる手術となります。

切開する腱鞘は一部だけですので指の機能には支障がありません。手術から1~2週間くらいで「抜糸」すると治療は終了です。抜糸とは、手術の時に切り口や傷口を縫った糸を抜くことです。

費用についてはおおよそ３割負担の方で1万円くらいと思ってください。この手術はご加入されている医療保険や生命保険によっても治療費が補償されることもありますので、保険会社の方とよく相談してみましょう。

ドケルバン病の予防

痛くなる前にドケルバン病を予防しましょう。簡単に実行することが難しいのは重々承知しておりますが、親指を使わないようにして安静にするのが最も重要です。手首に負担をかけないように、手首をひねる動作を少なくしたり、長時間のスマホやパソコンは避けて、休憩をはさみながら作業したり、少しでも違和感や痛みを感じたら、湿布などで炎症を抑えるようにしましょう。

また特に女性の方は、ドケルバン病の原因の一つである“エストロゲンの低下”を防ぐことも意識しましょう。エストロゲンの低下を防ぐには、食事と運動の2つの方法があります。

おやま整形外科クリニックでの治療費の例