【頚椎症性脊髄症】特に姿勢が悪い人は要注意！

2025年3月7日

頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症という病名をご存知でしょうか？背骨の中で首のあたりに位置し、 7つの骨で形成される部分を頸椎と呼びます。この頚椎が加齢などにより変形する病気を頚椎症と呼びます。また、神経根や脊髄が圧迫され頚や肩甲骨付近の痛みや、頚肩から腕や手にかけて痛みやしびれを生じることがあり、障害される部位により頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症と呼ばれます。
近年では「スマートフォンやパソコンの普及」・「運動不足による不良姿勢」なども症状の原因の一部と考えられます。そこで今回は「頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症」について詳しくご紹介します。

頚椎症性脊髄症と頚椎症性神経根症

頚椎症性脊髄症とは

　背骨をつなぎ、クッションの役割をしている組織を椎間板と呼びます。椎間板は、 20歳頃から変性、「老化現象」が始まると言われ、この変性が進むと椎間板が潰れたり、靭帯が厚くなったり、硬くなったりすることで、頚椎症を引き起こします。それにより、頚椎の脊柱管（骨の中にあるトンネル）内にある脊髄が圧迫されて、しびれなどの症状が出現し、これを「頚椎症性脊髄症」と言います。頚髄症とも言われます。日本人は脊柱管の大きさが欧米人に比較して小さく、「脊髄症」の症状が生じやすくなっていると言われています。

頚椎症性神経根症とは

　痺れなどの症状は頚椎症性脊髄症と同じでも、椎間孔（脊髄から手のほうへ分かれる神経の通り道）が狭くなり、神経根と呼ばれる部分を圧迫している場合は、頚椎症性神経根症と呼ばれます。頚椎症性脊髄症と頚椎症性神経根症、ともに頚椎症による神経の圧迫が原因で両者を合併することもあります。

頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症の症状

　どちらも首から手先にかけての痛みやしびれを引き起こします。ボタンの付け外し、お箸の使用、字を書くことなどが不器用になったり、筋力の低下や感覚の麻痺が起こることもあります。上を向くような動作で首を後ろへ反らすと、脊柱管が狭くなったり、神経根が圧迫されるため、症状が強く出る場合があります。

頚椎症性脊髄症の主な症状

　左右両側に症状を引き起こすことが珍しくなく、重症化した場合は下半身にまで症状が及び、歩き方がぎこちなくなったり、階段で手すりが必要となるような症状が出現します。比較的若年の方であれば、かけ足や片足立ちがしづらくなるなど、軽度の症状で自覚できますが、高齢者では気づくのが遅れる場合があります。また、尿が出づらくなる症状がある場合は医師に伝えるようにしましょう。

頚椎症性神経根症の主な症状

　通常、障害を受ける神経根は片側のため、左右どちらか一方の腕や手など限局した部分に症状が現れることがあります。

診察・検査

　腕や手のしびれ・痛みなどの症状があり、頚椎を後ろへ反らした際に症状が増強するかどうかを確認します。また、手足の反応を診察し、レントゲンで頚椎症性変化を認め、 MRIで脊髄や神経根の圧迫、骨棘による椎間孔の狭窄を認めることで診断します。
　中年以降ではレントゲンでの頚椎症性変化はほとんどの人に見られ、MRIでの脊髄圧迫所見も症状がない場合でも見られますので、検査だけで診断することはできません。また、頚椎に関わる他の病気や、神経内科の病気の一部は症状がよく似ている場合がありますので、注意が必要です。

治療

保存療法

　頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症の診断がついた場合、治療は多くの場合手術などを行わず保存療法が選択されます。軽度の場合は頚椎に負担をかけないような姿勢や動き方の指導に始まり、症状の程度に応じて内服での管理を行います。痛み止めとして、まず非ステロイド性消炎鎮痛薬が主に用いられます。また、しびれを伴う痛みや発作的に生じる鋭い痛みなど神経の痛みに対しては「神経障害性疼痛治療薬」、筋肉の緊張をやわらげ症状を軽くする目的で「筋緊張弛緩剤」なども用いられます。強い痛みが継続する場合は、ブロック注射なども行います。
　リハビリでは温熱・電気治療や頸椎牽引などで症状の緩和を図ったり、首の筋肉のコンディションを整え、筋力を鍛えることで、頚椎に係る負担を減らします。他にも首の負担を減らすために、頚椎カラーと呼ばれるむち打ちなどで使用されるコルセットを首に装着することもあります。「頚椎症性脊髄症」は転倒などの軽微な外傷で四肢麻痺（脊髄損傷）になる可能性が存在しますので、転倒しないように注意します。
　「頚椎症性神経根症」は基本的には自然治癒する疾患です。症状が出ないように頚椎を後方へ反らせないようにし、症状が強いときには消炎鎮痛薬の投薬などが行われます。治るまでには数か月以上かかることも少なくなく、激痛の時期が終われば長い目で見ながら治療を継続していきます。

手術について

　一般的に筋力低下や感覚麻痺などがある場合や、日常生活に支障が出るくらい症状が強い場合などは手術が検討されます。頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症の手術法としましては、首の後ろ側から切開し脊髄の通り道を広げる「椎弓形成術」や、前方から切開して神経を圧迫している椎間板・骨棘を取り除き、固定する「前方除圧固定術」などが多く行われています。
　また、近年では限られた医療機関ではありますが、内視鏡を利用した、身体への負担が非常に少ない手術も行われています。内視鏡による手術は入院期間が短く、早期の社会復帰が見込めることが特徴で、高齢の方でも比較的安全に受けられることから注目を浴びています。手術に限らず、まずは整形外科の医師に相談し、適切な治療方針を決めることが大切です。

予防法

　頚椎症は、加齢や繰り返される負担によって引き起こされることがほとんどですが、加齢に伴う変性には個人差があり、どのような人に起こりやすいのか、また、何が原因で重症化しやすいのかなどについて、今のところ詳しいことは分っていません。下向きでの作業や、首を反らす姿勢の繰り返しなども原因の一つと言われています。不良姿勢、重量物の挙上、頸椎に過度に負担がかかる運動などは、症状の進行を早める可能性がありますので、日頃のちょっとした注意の積み重ねが予防に役立つでしょう。

医師のアドバイス・まとめ

　頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症はご高齢の方に多いご病気です。痛みやしびれなどの症状だけではなく、進行すると手がうまく使えなくなる「麻痺」の症状が出たり、バランスよく歩けなくなる「歩行障害」も出現します。首を動かした際に手のしびれが強くなる場合は、頚椎の異常が関与している可能性があります。早期の診断と適切な治療が重要ですので、お気軽に当院へご相談ください。

おやま整形外科クリニックでの治療費の例

	1割負担	2割負担	3割負担
初診の診察レントゲン（6方向）処方箋	約900円	約1,780円	約2,670円
再診の診察物理療法（電気治療、ウォーターベット）	約110円	約220円	約330円
再診の診察運動器リハビリ（理学療法士）	約450円	約890円	約1,340円