【腰椎椎間板ヘルニア】症状・予防法・対処法を医師監修で解説

 「腰が痛くて、ヘルニアになったかも」って経験したことのある方はいませんか?また、ヘルニアの名前は知っているものの、その詳しい症状や原因、治療方法まで知らないから、勉強してみたいという方はいませんか。

目次

腰椎椎間板ヘルニアとは?

 まず、腰椎椎間板ヘルニアとは何かから説明します。人間の背骨は、7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎から成り立ちます。そのそれぞれの骨の間には、「椎間板」という骨と骨の間の衝撃を吸収するためにクッションの役割をしている組織があります。この椎間板に負荷がかかり、椎間板内部にある髄核という組織が椎間板の外に飛び出し、神経に接触する状態のことを腰椎椎間板ヘルニアといいます。腰椎椎間板ヘルニアを発症すると、腰や下肢に痛みが出たり、力が入らなくなったりする神経障害が発症します。
 ちなみに「ヘルニア」という言葉をよく聞くと思いますが、この「ヘルニア」については椎間板だけに用いられる言葉ではなく、一般的に「本来あるべき位置から飛び出してしまう症状全体」のことを指します。したがって、上記で説明した腰椎椎間板ヘルニアの他に、おへそが飛び出す(でべそ)“臍ヘルニア”、腸が飛び出す(脱腸)“鼠経(そけい)ヘルニア”などの種類があります。

腰椎椎間板ヘルニアの原因

 腰椎椎間板ヘルニアの原因は、一つの原因を特定することが難しく、複数の要因が合わさって発症することが多いと考えられています。腰椎椎間板ヘルニアになりやすい原因としては、運転手の仕事をしている人、力仕事の人、立ち仕事の人、20代から50代の男性、喫煙歴のある人、遺伝や家系の影響などが挙げられます。これらの要因に当てはまる方で腰痛・足のしびれなどに悩まされている方は腰椎椎間板ヘルニアが発症している可能性が疑われますので、一度病院に行くことをお勧めします。

腰椎椎間板ヘルニアの症状

 腰椎椎間板ヘルニアの症状には、急性型と慢性型があります。急性型は、重たい荷物を急に持ち上げたときや、くしゃみをした時などに、急に腰の痛みが発生します。イメージとしては、ぎっくり腰を発症したような痛みがでます。痛みが激しく歩くこともできなくなる場合もありますが、症状は徐々に軽くなります。しかし、そのまま放置しておくと症状が悪化し、椎間板から更に多くの髄核が押し出され、神経を更に圧迫してしまいます。このような症状になると慢性型に移行してくることとなり、長期的に症状が続くことになります。

 急性型も慢性型も腰の痛みの他に、左右どちらかの太ももから膝、足にかけて激しい痛みが起こる坐骨神経症を伴うケースが多いです。先ほども少し説明しましたが、背骨にある腰椎には、5個の椎体と5個の椎間板で構成されており、そのうち、腰椎椎間板ヘルニアを起こしやすいのは、第4腰椎と第5腰椎の間にある椎間板と、第5腰椎と仙骨の間にある腰椎です。前者の腰椎椎間板ヘルニアでは、ふくらはぎの外側から足の親指にかけて、後者では膝の後ろ側から足の裏側にかけて、痛みや痺れが発症します。また、腰椎椎間板ヘルニアの特徴として、背中を伸ばしているときや、寝ているときは痛みが楽になり、反対に、背中を丸めたり、前かがみになったりすると神経が圧迫されて痛みやしびれが強くなる症状が挙げられます。

腰椎椎間板ヘルニアの診断

 腰椎椎間板ヘルニアの診断は、問診の結果を元に、主に3つの検査を経て、確定することになります。正しい問診結果を提供するため、医師からの問診の際には「いつから・どんな場所が・どんなふうに痛むか・どのあたりがしびれるか」を詳しく、丁寧に説明しましょう。また、腰椎椎間板ヘルニアの診断には、大きく以下の3つの検査が利用されます。

痛みを再現する検査

・SLRテスト(下肢伸展拳上テスト)

坐骨神経痛か股関節痛かを判断するために用いられる検査です。SLRテストで陽性となった患者の椎間板ヘルニアを発症している確率は 90〜97%と非常に高精度な検査です。検査方法はあおむけになり、足をまっすぐ伸ばした状態で足を上げ下げし、その際に痛みの有無を診断します。

・FNSテスト(大腿神経伸展テスト)

FNSテストではどのあたりに腰椎椎間板ヘルニアが発症しているのかを診断します。検査方法はうつ伏せになり、膝を曲げ、足首を持ってあげます。その際に、痛みが発生するかどうかを確認します。

レントゲン検査

軟骨・椎間板はレントゲンでは写りません。そのため、レントゲン検査では腰の痛みの原因が腰椎椎間板ヘルニアの他にないかを確認します。

MRI検査

MRIは磁場と電磁場を利用して体の臓器を撮影する検査です。短時間で痛みもなく、画像としてみることで診断ができる最も有力な検査方法です。腰椎椎間板ヘルニアの場所や大きさ、形、神経がどの程度圧迫されているかなどがわかります。

腰椎椎間板ヘルニアの治療

 腰椎椎間板ヘルニアの治療は、保存療法と手術治療の2種類があります。以下でそれぞれの特徴と代表的な治療例を説明しますので、これからヘルニアが心配で病院に行く方や、既にヘルニアと診断され治療方法に悩んでいる方などは、是非とも参考にしてください。

保存療法

 保存療法とは手術を行わない治療法の総称です。腰椎椎間板ヘルニアは椎間板内部にある髄核という組織が椎間板の外に飛び出して発症するため、手術などの外科的治療法を行わない限り元に戻ることはありませんが、発症から数か月安静にすると自然に腫れが引き痛みが治まることがあります。神経を圧迫していた髄核が自然に小さくなり、神経に接触しなくなって圧迫されていた神経の炎症が治まり、症状は軽くなると考えられています。以下に保存療法の代表的な治療法とその特徴を記載しましたので、是非参考にしてください。

薬物治療

発症している症状によって薬を組み合わせて使用していきます。腰椎椎間板ヘルニアで良く用いられる薬には、非ステロイド性消炎鎮痛剤・筋弛緩薬・神経障害性疼痛治療薬・ビタミンB12製剤・貼り薬や塗り薬などが挙げられます。

運動療法

痛みが軽くなれば運動療法を行うこともあります。背筋・腹筋・腸腰筋など腰を支える筋肉を強化します。

装具療法

痛みが強いときにはコルセットなどを装着することで患部の安静をはかります。

手術治療

 保存療法を十分に行っても症状が続いている場合や、日常生活や仕事に支障がある場合は手術をすることもあります。排尿障害がみられる場合は後遺症を残す可能性があるため緊急手術が必要となる可能性があります。また、下肢の脱力症状がある場合も早期の手術を勧める場合があります。

 腰椎椎間板ヘルニアの手術には 1〜2週間の入院が必要となります。手術方法は腰椎椎間板ヘルニアの状況によって様々ですが、基本的には神経に接触している腰椎椎間板ヘルニアを背中側から取り出します。手術後は切開部分の傷口の痛みが治まれば通常の生活に戻ることができます。症状によりますが、最近では小さく穴をあけるだけで済む内視鏡やレーザーの治療も選択が可能になりました。レーザー治療は体への負担が少ない治療ですが、健康保険がきかないというデメリットもあります。

 手術後2年間は、再発することが多いと言われています。無理はせず適度な運動で様子を見ましょう。腹筋や背筋などを鍛えたり、前屈や中腰作業は控える、長時間の椅子に座った姿勢は控えるなど日常生活で腰への負担を避けるための動作を習慣づけていくことが大切です。

腰椎椎間板ヘルニアの予防

 腰椎椎間板ヘルニアになると、腰痛や足のしびれなどつらい症状に悩まされます。発症を予防するためには、普段の生活から気を付けることが大切です。ここでは、悪化を防ぐための5つのポイントを紹介します。

姿勢に気を付ける

長時間座る体制にならないように気をつけましょう。仕事の休憩時間には歩いたり、ストレッチをするなどして、適度にからだを動かしましょう。座るときの姿勢も大切です。背もたれの角度は約95°が負担が少ないと言われており、腰にクッションを挟むとより負担が軽減できると言われています。

重いものを持つときは腰ではなく膝を使う

重いものを持ち上げるときは、腰の曲げ伸ばしではなく、膝の曲げ伸ばしを使って持ち上げるようにしましょう。これによって、腰への負担は大幅に軽減されます。

禁煙する

上記でも述べましたが喫煙は、腰椎椎間板ヘルニアの原因になります。喫煙習慣がある方は禁煙しましょう。

定期的に運動をする

定期的な運動も大切です。運動によって筋力がつき、正しい姿勢が維持しやすくなります。症状が出始めた急性期は安静が必要ですが、痛みがある程度落ち着いてきたら軽いウォーキングやストレッチから始めてみましょう。

症状を自覚したら早めに病院に行く

腰椎椎間板ヘルニアを疑う症状を感じたら早めに整形外科を受診しましょう。腰痛は頻繁に起こる症状であるため「そのうち治るだろう」と気楽に考えてしまう人がいますが、腰椎椎間板ヘルニアは長引くと慢性化する恐れがあり、完治までに時間がかかる場合が有ります。ですので、腰椎椎間板ヘルニアの治療には、早期に病院へ受診し、適切な治療をすることが大切です。

監修医師のコメント

腰椎椎間板ヘルニアはよくある病気であり、皆さんも1度は耳にしたことがあると思います。しかし、実は意外とどういう病気かは分からなかったという人も多いのではないでしょうか?今回は椎間板以外にも使用される「ヘルニア」の意味から、本題である椎間板ヘルニアのメカニズム・リスク・治療方法など幅広く説明させていただきました。万が一、今回紹介した症状に見覚えのある方は一度最寄りの整形外科を受診するようにしてください。特に「排尿障害」「下肢の脱力」「歩行障害」がある方に関してはすぐに手術が必要となることもあります。早急に受診するように心掛けてください。

おやま整形外科クリニックでの治療費の例

初診の診察レントゲン(6方向)・処方箋
1割負担:約900円
2割負担:約1,780円
3割負担:約2,670円
再診の診察・物理療法
(電気治療、ウォーターベット)
1割負担:約110円
2割負担:約220円
3割負担:約330円
再診の診察・運動器リハビリ(理学療法士)
1割負担:約450円
2割負担:約890円
3割負担:約1,340円
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