デュロキセチン（サインバルタ）

中枢神経系にある、痛みを抑える経路（下行性痛覚抑制系）に働きかけることで痛みを和らげる、痛み止めの1種です。

痛みは様々な場面で感じることがあると思います。

原因別でみると

・火傷や骨折による炎症が原因で起こる侵害性疼痛

・脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの神経圧迫や糖尿病による神経自体の障害が原因で起こる神経障害性疼痛

という2種類あり、それ以外に社会的・心理的な原因で起こる痛みもあります。

このような痛みを感じる時は炎症や神経圧迫の刺激がいくつかの中枢神経を通って大脳に伝わると痛みとして感じるようにできています。人間には痛みを和らげる「下行性痛覚抑制系」という機能が備わっています。

下行性痛覚抑制系では、ノルアドレナリン、セロトニンという物質が働くことで刺激を伝える中枢神経系の働きを抑えて、大脳に刺激が伝わらなくなり、痛みを和らげてくれます。

サインバルタはセロトニンとノルアドレナリンの濃度を高めることで下行性痛覚抑制系の機能を亢進させて痛みを和らげます。

通常は 1日1回朝食後、デュロキセチンとして 40mgを服用してください。服用は1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量していきます。効果不十分な場合には、1日60mgまで増量することができます。

＊60mgが通常の量になりますので、薬の量が増えたからといって、症状が悪くなったわけではありません。

・気がついた時点で１回分を服用してください。

・気がついた際の時間と次に飲む時間の間隔が短い際は、飲み忘れたお薬は服用せず、次に服用する時間に1回分を服用してください。

・多く服用してしまうと体の震え、発熱、吐き気、胸がドキドキするなどの副作用が現れることがありますので２回分を一度に服用することはしないでください。もしも多く服用してしまった場合、医師または薬剤師に相談してください。

・コップ1杯の水もしくはぬるま湯で服用してください。

 服用量が減る場合や中断する際は、必ず医師の指示に従ってください。

急に使用を止めることで、いらいらする、興奮しやすくなる、めまい、頭痛、吐き気、筋肉の痛みなどの症状があらわれることがあります。

・この薬は、痛みを和らげることはできますが、痛みの原因を取り除く治療薬ではありません。

・めまい、眠気がでることがありますので、自動車や車の運転、高いところでの作業等には充分に気をつけてください。

・アルコールやセント・ジョーンズ・ワート（セイヨウオトギリソウ）を含有する食品は控えてください。サインバルタによるセロトニンの働きをさらに増強させて、手足の震えや不安感などの副作用が現れることがあります。

 不安、興奮、発汗　[セロトニン症候群]

むくみのない短期間での体重増加、けいれん、意識障害　[抗利尿ホルモン不適合分泌症候群]

倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる　[肝機能障害、肝炎、黄疸]

高熱、水ぶくれ、眼や口など粘膜のただれ　[皮膚粘膜眼症候群]

呼吸困難（息苦しい）、けいれん、蕁麻疹　[アナフィラキシー反応]

サインバルタを服用することで、死にたいという感情が湧く、うつ症状が現れる、攻撃的な行動をとる、など変化が起こる可能性があります。そのような兆候が出てきたら医師、薬剤師に必ず緻密に相談するようにしてください。

 ・妊婦または妊娠している可能性がある人、授乳婦は医師に相談してください。

・複数の医療機関を受診する場合や、薬局などで他の薬を購入する場合は、必ずこの薬を飲んでいることを医師または薬剤師に伝えてください。

・お子様の手の届かないところに保管してください。

・室温（1〜30℃）で、日光や湿気を避けてください。

・薬が残ってしまった時は、お薬を受け取った薬局にて廃棄方法を相談し、保管はせずに廃棄するようにしてください。

当院では門前薬局の椿メディカル様を中心に、各薬局様で取り換えていただくことのできる処方箋を発効しております。ご自分のかかりつけ薬局にて、必ず3日以内に引き換えてもらいましょう。3日を過ぎるとお薬に変えてもらえなくなってしまいます。お気を付けください。

現在の薬価（2021年10月時点）

サインバルタは痛みを和らげるお薬でありながらも、うつ病や糖尿病による神経障害にも使用されるお薬になります。「うつ病に使うお薬」「副作用で死にたくなってしまったり、攻撃的になってしまう」と聞くと服用が怖くなる方もいらっしゃると思います。医師や薬剤師の指示どおりに服用し、万が一の際は相談をして、正しく服用する、対応するようにしましょう。

1. 仲上 大貴（なかがみ だいき）: 薬剤師…志薬塾塾長（https://haru001.wixsite.com/kaeru/blank-2）
2. 小山 翔平（おやま しょうへい）: 日本整形外科学会 認定専門医…おやま整形外科クリニック 院長

氏名: 小山 翔平（おやま しょうへい）
出身地: 山形県寒河江市
資格: 日本整形外科学会 認定専門医