膝・肩・肘などの変形性関節症で悩んでおり、現在痛み止めの内服やヒアルロン酸の注射などの薬物治療で治療していても、あまり良好な結果が得られていなかったり、副作用が強くて治療が辛いなどと感じている方は多いのではないでしょうか。
そのような方に対して、多血小板血漿療法・通称PRP療法は、自分自身の血液を利用する治療法であり、薬物療法と比較して副作用が少なく、治療確率も高い治療法です。
今回は、血小板という細胞が豊富に含まれている血液を濃縮した物を、損傷が見られた骨・関節・筋肉・腱・顔などに注入し、痛みを取ったり、美容目的に肌の調子を整えたりする治療法である「多血小板血漿療法・通称PRP療法」に関して、PRP療法とは何かから、PRP療法の実施例および治療の流れ・費用・メリット・デメリット・適応除外基準、更にPRP療法を更に進化させたAPS療法というものを、現役医師監修の元、徹底的に解説します。
肩・肘・膝などの変形性関節症にお悩みの方で、現在、痛み止めの内服やヒアルロン酸の注射などの薬物療法で治療されている方に対して、PRP療法は自分自身の血小板等を利用する治療法で、薬物療法と比較して副作用が少なく、治療確率も高い治療法となります。



詳しく説明すると、PRPには800以上のタンパク質や分子、その他の成長因子が多く含まれており、この PRPを、損傷が見られた骨格・結合組織・口腔・顔などの再生や治療に用いることで、成長因子を増加させ、治療プロセスを高め、損傷箇所の修復プロセスを促進させることができます。
PRP に含まれる血小板には血管が損傷した際、出血を止める働き及び種々の成長因子を放出する働きがあります 。このPRP療法には、血小板から放出される成長因子等の成分により、傷んだ組織の修復や関節炎の症状軽減を促進する効果が期待されます。
このように、PRP 療法は自分で自分を治す力、いわゆる自然治癒力をサポートする治療法ですので、拒絶反応などの心配がなく安全性が高いため、今、最も注目されている治療法の一つです。日本国内では症例が少なく馴染みがないですが、ヨーロッパやアメリカでは既に頻繁に行われている治療法でもあります。

PRP療法の例

PRP療法の例として圧倒的に多いのは"膝の変形"で悩んでいる方で、その次に肩や肘の変形などです。変形性膝関節症は、関節の変形の進行に伴い、軟骨がすり減り、半月板が損傷し、炎症が発症し、膝に水が溜まります。PRP療法では、このような組織の修復を促進し関節の炎症を抑制します。
一方で、膝の関節の隙間が完全に消失しているような変形が重症な方や軟骨の損傷が激しい方はPRP療法でも治すことが難しいとされています。
理由としては「PRP に含まれる血小板自体が軟骨や半月板に変化するわけではない」というためです。PRP は血小板の「出血を止める働き」および「種々の成長因子を放出する働き」により関節の修復や炎症を取る働きがあり、これにより痛みが抑制されますが、先ほどお伝えした通り、再生医療と名がついていはするものの、完全に膝の軟骨などが再生するわけではないため、重症な方には効果が限定的となります。従来の変形性関節症に対する薬物療法は、痛み止めの内服やヒアルロン酸の注射などの治療が一般的でしたが、副作用が少ないPRPを関節に注射することにより痛みを強く軽減することができるため、近年、PRP療法が欧米で広く支持されています。

PRP療法の大まかな流れ

以上が大まかな流れとなります。先ほどもお伝えした通り、施設ごとに治療方法が微妙に違っておりますし、
最近では「採血して、その日のうちに治療可能」という方法も出てきておりますので、あくまでも参考としてお考えください。

費用

したがって自由診療となるため、治療費は病院によって様々です。一般的な病院だと、1部位で15万円程度の治療費が多いようです。これでも十分高額な治療ではありますが、以前は 1部位あたり 30万円程度の治療費となっておりましたので少しずつ治療費も落ち着いてきている状況と言えるかもしれません。また注射後の経過観察やリハビリテーション、痛み止め薬の処方などは保険適用となりますので、そこは通常の治療と大きく変わりはないでしょう。ただし注意していただきたいのが、「PRP療法は個人差が大きく、効果が出る時期や程度に差があり、痛みを全て取り除くことができない可能性がある」というのがPRP療法の現状である、ということを理解した上で検討・実施する必要がありますので、強く書き添えておきます。

PRP療法のメリットとデメリット

PRP療法の除外基準

またこのPRP療法にも、いくつかの適応除外基準があります。次の内容に当てはまる方は PRP療法を受けることができませんので、自分自身が当てはまっていないか注意して、治療を始めるようにしましょう。

PRP療法の先、APS療法

PRP療法を更に進化させた治療法に、APS療法というものがあります。
APS療法とはAutologous Protein Solutionの頭文字を取ったもので、日本語では自己たんぱく質溶液と呼ばれます。
PRPを更に遠心分離や特殊加工することで、炎症を抑える働きをするタンパク質と、軟骨を守る成長因子を高濃度に抽出したものです。
次世代PRP療法とも呼ばれており、関節の痛みや炎症の軽減、軟骨の変性や破壊の抑制を期待できます。
PRP療法では、主に筋・靭帯・腱などの組織修復を促すことが期待されますが、一方で、APS治療は主に関節症治療への応⽤が期待されています。
APS療法のメカニズムは、膝や肘などの関節内で炎症を引き起こすタンパク質である IL-1(インターロイキン1)やTFN-α(ティーエヌエフアルファ)などの炎症性サイトカインの活動を阻害することで、炎症を抑え、痛みを軽減させるという流れです。ヨーロッパでの臨床試験では、中程度までの変形性膝関節症に対して、1回の注射治療で最大24ヶ月間に渡って痛みを抑え、機能改善が継続したと報告されています。膝や肘などの関節に違和感を持った際には早めに整形外科の専⾨医に相談し、APS療法を適応することで、症状の改善が期待できます。
今回の PRP療法については、最新の再生医療の1つではありますが、国内でも徐々に広まりつつある治療となっています。まだまだ高い治療費ではあるものの、治療が普及するとともに治療費が徐々に下がってきておりますし、各疾患に対する治療成績のデータも集まりつつあります。しかし、本編中でもお話しした通り、”再生医療”と名がつくものの、実際に軟骨や半月板が再生されるわけではないということには注意する必要があります。「自分の血液を利用して行う治療」ということで再生医療とよばれていますが、その本質は「自分の血液の成分で炎症をとる」「成長因子を注入し組織の回復を早める」というところです。紛らわしいところにはなりますが、この動画にて PRP療法について知っていただくきっかけとなれば嬉しいです。


参考文献

・多血小板血漿(PRP)療法の原理とその効果 日本美容外科学会会報 33(2), 71-77, 2011-06-25
・多血小板血漿 : PRP療法 (特集 スポーツ障害 : 最新の知識と治療法) Bone joint nerve : BJN 4(4), 699-706, 2014-10
・PRP治療を受けれられる患者様へ 厚生労働省

監修医師

小山 翔平 (おやま しょうへい)  日本整形外科学会 認定専門医…おやま整形外科クリニック 院長