トラマール(トラマドール塩酸塩)
トラマール(一般名:トラマドール塩酸塩)は、脳や脊髄など中枢神経にある「痛みを抑える経路(下行性痛覚抑制系)」に働きかけて、痛みを和らげるお薬です。モルヒネの約1/5ほどの鎮痛効果を持ち、がんによる痛みや慢性的な痛みの軽減にも使用されます。
モルヒネと同じように「オピオイド系鎮痛薬」に分類されますが、トラマールは麻薬ではなく、依存性が少ない非麻薬性鎮痛薬です。そのため、医師の指示のもとで適切に使用すれば、安心して痛みのコントロールに役立てることができます。
トラマ ール作用・効果
痛みには大きく分けて次の2種類があります。
侵害性疼痛
骨折や火傷など、炎症によって起こる痛み
神経障害性疼痛
神経が圧迫されたり傷ついたりして起こる痛み
トラマールは、このどちらのタイプの痛みにも効果があるのが特徴です。また、体に備わっている「痛みを抑える仕組み(下行性痛覚抑制系)」を活性化し、ノルアドレナリンやセロトニンの働きを高めて痛みを感じにくくします。
用法・用量
トラマールは、痛みの程度や体の状態に合わせて医師の指示に従って服用するお薬です。
慢性疼痛に用いる場合
- 通常、1日100〜300mgを4回に分けて服用します。
1回あたりは100mgまで、1日で400mgを超えないようにします。
初めて服用する場合は、25mgから少しずつ始めるのが望ましいです。量を増やす・減らすときは、25mgずつ調整します。4〜6時間ごとに、できるだけ決まった時間に服用しましょう。服用を始めて4週間経っても効果が不十分な場合は、治療内容を医師と相談して見直します。75歳以上の方は、1日300mgを超えないようにすることが推奨されています。
ツートラムの用量用法
- 通常は、トラマドール塩酸塩として1日100〜300mgを朝と夕の2回に分けて服用します。
1回あたりは200mgまで、1日で400mgを超えないようにします。
初めて服用する場合は、50mgから少しずつ始めるのが望ましいです。量を調整する場合は、1回50mgずつ・1日100mgずつ増減します。朝と夕の1日2回、できるだけ決まった時間に服用してください。服用を始めて4週間経っても十分な効果が得られない場合は、治療の見直しを行うことがあります。75歳以上の方は、1日300mgを超えないようにすることが推奨されています。
ワントラムの用量用法
- 通常は、トラマドール塩酸塩として1日100〜300mgを1回服用します。
1日あたり400mgを超えないようにしてください。
初めて服用する場合は、100mgから少しずつ始めるのが望ましいです。量を増やす・減らすときは、1日100mgずつ調整します。毎日できるだけ同じ時間帯に服用しましょう。服用を始めて4週間経っても十分な効果が得られない場合は、治療内容を見直すことがあります。75歳以上の方は、1日300mgを超えないようにすることが推奨されています。
飲み忘れたときの対応
- 気がついた時点で1 回分を服用してください。
- 気がついた際の時間と次に飲む時間の間隔が短い際は、飲み忘れたお薬は服 用せず、次に服用する時間に1回分を服用してください。
- 2回分を一度に服用することはしないでください。もしも多く服用してしまった場合は医師または薬剤師に相談してください。
服用の仕方
錠剤の場合
- コップ1 杯の水もしくは、ぬるま湯で服用してください。
OD錠(口腔内崩壊錠)
- 少量の水や唾液で溶けるタイプのお薬です。口の中に入れると、唾液で自然に溶けて服用できます。
※どちらの方法でも効果に違いはありませんので、飲みやすい方法で服用してください。
- 薬を中断するとき
服用量を減らすときや、お薬をやめるときは、必ず医師の指示に従ってください。
トラマールやワントラムなどのお薬は、急に減らしたり中止すると、体がびっくりして「退薬症状(離脱症状)」が出ることがあります。そのため、痛みが落ち着いてお薬が不要になった場合でも、医師と相談しながら少しずつ量を減らしていくことが大切です。自己判断で服用量を変えたり、中断することは絶対にしないようにしましょう。
トラマ ールの注意事項
- トラマールは痛みを和らげる薬であり、痛みの原因を治す薬ではありません。
- 長期間の使用で慣れや依存が生じることがあります。中止や減量は必ず医師の指示に従って行ってください。
- 吐き気や便秘などの副作用が出ることがあります。つらい場合は医師に相談してください。
- 眠気・めまいが起こることがあるため、車の運転や危険な作業は避けましょう。
- 服用中の飲酒は控えてください。アルコールで副作用が強まることがあります。
副作用
- 呼吸が苦しい、ゼーゼー・ヒューヒューと音がする、顔や唇・まぶたが腫れる
- 息が浅くなる、呼吸が遅くなる、息苦しい
- 体の筋肉がピクピク動く・けいれんする
- 急に意識を失う、意識がもうろうとする
- 不眠・不安・服用をやめられないなどの症状
少しでも体調の変化を感じたら、自己判断せずに必ず医療機関へご相談ください。
小児への投与
- 12歳未満の小児への投与は禁忌となっており、投与はできません。
妊婦 ・授乳婦の方へ
- 妊娠中、または妊娠している可能性がある方、そして授乳中の方は、リリカを服用する前に必ず医師にご相談ください。
複数の医療機関を受診されている方へ
複数の医療機関を受診する場合や、薬局で市販薬を購入する場合には、必ずこの薬を服用していることを医師または薬剤師に伝えてください。
保管方法
- お子様の手の届かないところに保管 してください。
- 室温(1~30°C )で、日光や湿気を避けてください。
- 薬が残ってしまった時は、お薬を受け取った薬局にて廃棄方法を相談し、保管はせずに破棄するようにしてください。
まとめ
トラマールは、中枢神経に働きかけて痛みをやわらげるお薬です。
モルヒネに似た鎮痛作用を持ちますが、麻薬ではなく、依存性が少ない非麻薬性オピオイド鎮痛薬に分類されます。
炎症によって生じる痛みや、神経が傷つくことで起こる神経痛など、さまざまなタイプの痛みに効果があります。痛みの原因そのものを治す薬ではありませんが、痛みをやわらげることで、日常生活をより快適に過ごせるようサポートします。
服用の際は、医師の指示に従って、決められた量と時間を守ることが大切です。また、自己判断で服用をやめたり、量を増やしたりしないようにしましょう。服用中に吐き気や便秘、眠気などの副作用が見られた場合は、早めに医師や薬剤師に相談してください。
トラマールは、痛みと上手につき合うためのお薬です。
正しく使用しながら、快適で安心できる毎日を目指しましょう。
監修薬剤師・医師
- 仲上 大貴(なかがみ だいき):薬剤師…志薬塾塾長
- 小山 翔平(おやま しょうへい): 日本整形外科学会 認定専門医
当院での処方について
処方箋は発行日を含めて4日以内に、かかりつけの薬局でお薬と引き換えてください。4日を過ぎると処方箋は無効となり、お薬を受け取れなくなりますのでご注意ください。
