トラムセット

トラマドール（トラマール）とアセトアミノフェンの2種類のお薬が配合されています。
痛みを感知する大脳や中枢神経系にある、痛みを抑える経路（下行性痛覚抑制系）に働きかけることで痛みを和らげます。

トラムセットにはトラマドールとアセトアミノフェンが配合されているため、作用の仕方もいくつか存在します。

まず、痛みは様々な場面で感じることがあると思います。

原因別でみると

・侵害性疼痛：火傷や骨折による炎症が原因で起こる

・神経障害性疼痛：脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの神経圧迫や糖尿病による神経自体の障害が原因で起こる

2種類あり、それ以外に社会的・心理的な原因で起こる痛みもあります。

痛みは炎症や神経圧迫の刺激がいくつかの中枢神経を通って大脳に伝わると痛みとして感じるようにできています。また、人間には痛みを和らげる「下行性痛覚抑制系」という機能が備わっています。

下行性痛覚抑制系では、ノルアドレナリン、セロトニンという物質が働くことで刺激を伝える中枢神経系の働きを抑えて、大脳に刺激が伝わらなくなり、痛みを和らげてくれます。

また、痛みは「がん性疼痛」「非がん性慢性疼痛」に分けられ、トラマドール単剤（トラマール）ではどちらにも使用できますが、トラムセットでは非がん性慢性疼痛にしか使用できません。

トラマールはμ受容体を刺激して炎症や神経圧迫など痛みとして感じる刺激の大脳への伝達を抑え、且つセロトニンとノルアドレナリンの濃度を高めることで下行性痛覚抑制系の機能を亢進させて痛みを和らげます。

NSAIDsは侵害性疼痛、リリカやタリージェは神経障害性疼痛に用いられますが、トラマールはどちらの痛みにも対応できます。

大脳での痛覚の閾値を上げることで痛みを抑えます。

閾値とは、痛みを感じる為に必要な刺激の大きさや量のことで、閾値を上げることで大脳が痛みとして感じにくくなります。

また、アセトアミノフェンには脳にある視床下部と言われる体温を調節している部位に働きかけることで熱を下げる作用も持っています。

＊添付文書参照

通常、成人は、1回1錠、1日4回服用してください。

＊服用の間隔は4時間以上空けてください。

＊症状により変わりますが、1回2錠、1日8錠を越える量は服用してはいけません。

＊空腹時の服用はなるべく避けるようにしてください。

＊服用を始めてから、4週間を経過しても望むような効果が得られない時は、治療の変更を検討していきます。

・気がついた時点で１回分を服用してください。

・気がついた際の時間と次に飲む時間の間隔が短い際は、飲み忘れたお薬は服用せず、次に服用する時間に1回分を服用してください。

・多く服用してしまうと、呼吸が浅くなる、痙攣発作、食欲不振、吐き気、倦怠感（だるさ、疲れやすい）、発汗などの症状が出ることがあります。その為、２回分を一度に服用することはしないでください。もしも多く服用してしまった場合、医師または薬剤師に相談してください。

・コップ1杯の水もしくはぬるま湯で服用してください

薬を中断するとき

服用量が減る場合や中断する際は、必ず医師の指示に従ってください。

減量していく時に退薬症状が発現することがあります。必要なくなり中断する際は徐々に減量していきます。自己判断で服用量を変えたり、中断することはしないでください。

・トラムセットによる治療は痛みの原因を取り除くものではないです。

・長期間使用することにより、耐性、精神的依存、身体的依存を生じることがあります。その為、トラムセットを中断したり、減量する際に、不安、不眠症、振戦、胃腸症状、パニック発作、幻覚、錯感覚、耳鳴等の退薬症状が発現することがあります。

 ・気持ち悪くなる、嘔吐、便秘等の症状が発現することがあります。その対策として、気持ち悪くなる・嘔吐には制吐剤、便秘には下剤の併用をしていきます。

・眠気、めまい、意識消失が起こることがあります。自動車や自転車の運転、高所での作業など危険な作業はしないように注意してください。

・アルコールは控えるようにしてください。アセトアミノフェンの肝障害が起こりやすくなったり、トラマドールの効果が強く起こってしまうことがあります。

・息苦しい、蕁麻疹、意識がもうろうとする　[ショック、アナフィラキシー]

・呼吸が浅く速くなり、呼吸をしにくい　[呼吸抑制]

・けいれん[痙攣]

・意識がうすれる、考えがまとまらない、判断力が低下する　[意識消失]

・この薬の使用を中止しようとしてもやめられずに使用を続けたくなる　[依存性]

・高熱（38℃以上）、眼の充血、口や唇のただれ、顔や全身が赤くなる　[中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、急性汎発性発疹性膿疱症]

[　]で示した副作用が現れる際に、最初に現れる症状になります。

このような症状が出た場合には、すぐに医師または薬剤師に相談してください。

・12歳未満の小児への投与は禁忌となっており、投与はできないです。

・妊婦または妊娠している可能性がある人、授乳婦は医師に相談してください。

・複数の医療機関を受診する場合や、薬局などで他の薬を購入する場合は、必ずこの薬を飲んでいることを医師または薬剤師に伝えてください。

＊アセトアミノフェンは市販でも販売されている医薬品になります。過量投与により肝障害が起こる可能性がありますので受診の際は必ず医師、薬剤師に服用していることを伝えてください。また、薬局やドラッグストア等で医薬品を購入する際も薬剤師に服用していることを伝えてください。

・お子様の手の届かないところに保管してください。

・室温（1～30℃）で、日光や湿気を避けてください。

・薬が残ってしまった時は、お薬を受け取った薬局にて廃棄方法を相談し、保管はせずに廃棄するようにしてください。

当院では門前薬局の椿メディカル様を中心に、各薬局様で取り換えていただくことのできる処方箋を発効しております。ご自分のかかりつけ薬局にて、必ず3日以内に引き換えてもらいましょう。3日を過ぎるとお薬に変えてもらえなくなってしまいます。お気を付けください。

現在の薬価（2021年10月時点）

 トラムセットはトラマールにさらに解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェンを配合した、痛みを和らげるお薬になります。

アセトアミノフェンは市販の風邪薬として販売されているので馴染みがあるお薬かもしれません。だからといって完全に安全というわけではありませんので、用量用法を守って服用してください。

トラマールとの違いとして、肝障害が起こりやすいお薬になります。アルコールは控えるようにしていただき、安全に治療を行っていきましょう。

1. 仲上 大貴（なかがみ だいき）: 薬剤師…志薬塾塾長（https://haru001.wixsite.com/kaeru/blank-2）
2. 小山 翔平（おやま しょうへい）: 日本整形外科学会 認定専門医…おやま整形外科クリニック 院長

氏名: 小山 翔平（おやま しょうへい）
出身地: 山形県寒河江市
資格: 日本整形外科学会 認定専門医